“You’ll Never Walk Alone” がリバプールやセルティック、FC 東京をはじめとする世界中のクラブで歌われているように、サッカーの応援歌はチーム横断で愛されることが多いですね。
たとえばマンチェスター・ユナイテッドではルーニーの “White Pele” で有名なこの曲、プレミアリーグの中継を見ているとあちこちのチームで歌詞を変えて歌われています。ラグビーでも得点時のチャントとして歌われているようで、国民歌のひとつなんでしょう。日本の野球でいう “ダッシュケイオウ”(=ファミスタのアレ)や早稲田の “コンバットマーチ” みたいな。
さて、とても楽しいこのメロディ、誰の曲なんでしょうか。
まずたどりつくのが「The Piranhas」の “Tom Hark” という曲。ホーンが効いてるキャッチーなスカです。1980 年のヒット曲で、質問サイトでもたいてい「これがオリジナルだ」といって紹介されています。
いかにも UK ポストパンク風味なこの曲、でも実は彼らのオリジナルではありません。1964 年へ 15 年余さかのぼると、当時レゲエのアイドルだった「Millie Small」によるキュートな曲が見つかります。
かわいい。
しかしこれでもまだオリジナルではなくて、さらに古い「Elias and His Zig Zag Jive Flutes」というグループによる、南アフリカのストリートミュージック「クウェラ」調の録音があります。1956 年。1958 年にはイギリス本国でチャートイン。
アフリカが起源なのはある意味定番コースなのでこれでやっとルーツ発見かと思ったら、Wikipedia には更にこういう記述がありました。せ、1927 年!?
The tune (which was based on a 1927 melody by Herbert Farjeon for I’ve danced with a man, who’s danced with a girl, who’s danced with the Prince of Wales) was picked up in the UK and used as the theme music for a TV show, The Killing Stones.
Jack Lerole
http://en.wikipedia.org/wiki/Jack_Lerole
ここで指摘されているメロディのルーツ、「Herbert Farjeon」による “I’ve danced with a man, who’s danced with a girl, who’s danced with the Prince of Wales” という長いタイトルの曲、残念ながらいまんとこオリジナルの録音が見つかりません。
ただ同曲は 1978 年に “Edward & Mrs. Simpson” というTV ドラマのテーマ曲としてリメイクされているようで、それがおそらくこれ。
なぜか “God Save The Queen” や “リパブリック賛歌 (=Glory Glory Hallelujah)” も一緒にツギハギしている雑な作り。うーん、なんか違うかな?
ともあれここまでをまとめてみると、”Tom Hark” はどうやら
1927 イギリス本国で作られたらしいオリジナルメロディ
↓
1956 南アフリカのストリートでリズミカルに発展
↓
1958 イギリスへ逆輸入されてヒット
↓
1964 ジャマイカンへも波及してスカ化
↓
1980 レゲエ好きなポストパンク世代がリメイク
↓
2012 スポーツ好きの愛唱歌
といった歴史を歩んでいるメロディのようです。
思いのほか歴史が長くてびっくり。Wikipedia と YouTube だけでここまでわかるのにも改めてびっくり。そしてルーニーが白いペレであることは間違いないので、それはびっくりしない 🙂