たとえば 10 代のころなんて、自分がこの世のすべてを制覇できるのではないかと思いがちだし、まれにそれが現実になることもある。残念なことに僕たちはそうならなかったけれど、それについて後悔の念があるわけでもない。「相変わらず」という言葉ひとつで総称できてしまうような、たいして大きな変化のない日々を過ごしつつも、それなりにあれやこれやの経験を積み重ねて、今に至っている。
現実を理解しながらも、それでも僕たちはいまだに何かしらの価値基準を必要としている。どうもわかってきたけれど、おそらくこれは死ぬまで必要とし続けるんだろう。幸いなことに、僕たちが必要としているような通貨も法律も宗教も、つまり社会にあるたいていの価値基準は僕たち自身の手によって創られてきたもので、誰かしらの意図や作為がねっとりと練り込まれているってことを、理解するだけの明晰さを持つことはできた。
僕たち万人に共通の、本当に共通の基準とはなにか。たぶんそれは、時間だ。つまり、人の一生が遅かれ早かれおよそ 100 年に満たない期間で完結するという事実と、それに対する僕たちの共通認識だけが、おそらく絶対の価値基準となりうるのだ。